51趣旨 橋梁等については、錆止め等の目的で塗布される塗料は、一般に鉛を数十%から十数%程度含有し、また、クロム酸を含有したものがあります。鉛の有害性を考慮し、業界の自主的な取組により鉛含有塗料の流通は少なくなっているものの、現在でも多くの橋梁等に塗膜として残存しています。これら鉛等有害物を含有する橋梁等の塗装の剥離やかき落とし作業(以下「剥離等作業」という。)を行う場合には、塗料における鉛等有害物の使用状況を適切に把握した上で、鉛中毒予防規則(昭和47年労働省令第37号。以下「鉛則」という。)等関係法令を遵守することはもとより、状況に応じた適切なばく露防止対策を講じる必要があります。 この文書は、橋梁等に塗布された塗膜の剥離等作業における労働者の健康障害防止措置のために注意すべき事項を示すものです。橋梁等に塗布された塗膜の剥離等作業を発注する者は、この注意事項を参照し、塗布されている塗料中の鉛やクロム等の有害な化学物質の有無について把握している情報を施工者に伝えるほか、塗料中の有害物の調査や施工方法に伴って発生する塗料や剥離剤に由来する有害物へのばく露防止対策について必要な情報伝達及び経費等の配慮を行うことが望まれます。 なお、この文書に記載された事項は、法令を遵守するため実施しなければならない事項を除き、事業者においてリスクアセスメントを実施し、その結果に基づき現場の状況に応じた措置を実施することを妨げるものではありません。ただし、この場合でも、労働者が取り扱う化学物質の危険有害性、リスクアセスメントの結果等について、労働者に周知する必要があることに留意してください。2労働者の健康障害防止措置 (1)塗膜の有害性による健康障害を防止するための標準的な手順 剥離剤等を使用する場合は、剥離剤等に含まれる有害な化学物質による健康障害を防止するため、以下の手順で行ってください。 ①ばく露防止対策 ○塗膜に含まれる化学物質について、鉛則等の規制対象となっている物質が含まれている場合は、法令に規定されている措置を確実に講じること。 ○鉛則等の規制対象となっている物質が含まれていない場合でも、塗膜に含まれる化学物質の有害性を確認し、剥離等作業についてのリスクアセスメントを実施し、リスクアセスメントの結果の労働者への周知、リスク低減措置を実施すること。 ○塗膜に含まれる化学物質の有害性に応じ、例えば送気マスクや防じん機能付き防毒マスク等の適切な呼吸用保護具、保護手袋等の保護具を確実に使用する等、十分なばく露防止措置を講じること。また、呼吸用保護具のフィルタ、保護手袋、保護衣等は使い捨てが望ましいこと。 ○作業場所をビニルシート等で隔離し、通風が不十分となる場合は、内部の塗膜の粉じんの濃度が高くなることが想定されるため、排気装置を設ける等、作業者のばく露濃度を低減させるための措置を講じること。 ○洗顔、洗身又はうがいの設備、更衣ための設備を設けること。 ○剥離等作業を行う場所には、その旨掲示するとともに、作業者以外は立ち入らせないこと。 ○作業者に対し、塗膜に含まれる化学物質の有害性、作業を行うに当たって注意すべき事項について、作業開始前に周知すること。 ○作業中、作業者に体調不良等が生じた場合にすぐに必要な対応が行えるよう、常時作業者の状況を把握できるような体制を確保すること。 ○呼吸用保護具の面体については、作業場より離れる都度、付着した粉じんを十分に拭い、作業場とは離れた汚染されていない場所に保管すること。 ②密閉空間で剥離等作業を行う場合の措置塗膜の剥離等作業を、隔離区域等内作業場で作業を行う場合は、当該区域内の塗膜の粉じんの濃度は極めて高濃度になるため、①の措置に加え、次の措置を行ってください。 ○隔離区域等内作業場に粉じんを集じんするため適切な除じん機能を有する排気装置を設けること。この際、排気装置の排気口は外部に設けること。また、排気装置は作業場の空間に応じて十分な排気量を有するものとすること。また、作業区画内は空気を循環させて滞留する場所を作らないことに留意すること。 ○隔離区域等内作業場については、関係者以外の立ち入りを禁じ、区域内で作業や監視を行う労働者については、後述の工法に応じた適切な保護具を着用させること。 ○隔離区域等内作業場より粉じんを外部に持ち出さないよう洗身や作業衣等の洗浄等を徹底すること。 ○隔離区域等内作業場の粉じんを運搬し、又は貯蔵するときは、当該粉じんが発散するおそれがないよう堅固な容器を使用し、又は確実な包装をすること。また、それらの保管については、一定の場所を定めておくこと。剥離剤等を用いず乾式により剥離等作業を行う場合において注意していただきたい事項
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